契約書
今年4月、成年年齢の引下げにあたり、様々なメディアが「契約」について取り上げていましたので、身近な問題として「契約」について考える機会になったかもしれません。確かに「契約」は、生活の中、あちこちに潜んでいます。
今回は、法務省が成年年齢引下げに向けて作成したリーフレット『18歳を迎える君へ 契約について学ぼう』を参考に、「意思表示の合致」について考えてみようと思います。
*リーフレットは、法務省のこちらのページで紹介されています。
法教育リーフレット『18歳を迎える君へ 契約について学ぼう』
発行:法教育推進協議会(2021年(令和2年)11月改訂)
いつ契約が成立したのか
リーフレットでは、“いつ「意思表示の合致」(=契約の成立)があったといえるのか”を、ツカサとタミオのゲーム機売買に関するL I N Eのようなメッセージのやり取り画面を使って検証しています。
まず、タミオが「売ってあげようか?」と持ちかけて、ツカサが値下げ交渉を開始、そして、タミオ「先にお金を払ってくれるなら、3万円で売ってあげるよ。」ツカサ「じゃあ、3万円で買うよ!!」タミオ「分かった!」ツカサ「ヤッター!」。
と、ここでリスのぬいぐるみ、ホウリス君の解説が入り、「3万円で買うよ!」というツカサの返事が“申し込みに対する承諾”になり、「二人の意思表示が合致した」時点だと伝えています。
* * *
この、ツカサとタミオの例をもとに、第1回のA担当者とBさんの会話を検証してみましょう。
まず、A担当者が“毎年頼んでいるアレを今年も依頼”、Bさんがスケジュールについて交渉、A担当者が最終納入日を提示、Bさんが「了解」と言って見積もりを送ると告げる…こんな流れでしたね。
なんと!!!意思表示は合致していない?!
ツカサがゲーム機を3万円で買うことに承諾したことと、同じ場面はどこでしょうか…実はまだ登場していないことに気付くことと思います。つまり、ツカサとタミオの例を当てはめて考えてみると、“Bさんが送る見積りにA担当者がO Kした時点が「意思表示の合致」”、ということになりそうなのです。
確かに、見積書には「アレ」の業務名と単価が書いてあり、納入日と支払日の記載もあることでしょう。A担当者がこれを見て、「アレ?アレが違うよ」とか、「これじゃ納入ギリギリじゃない?」と思ったら、見積りに承諾することはないでしょう。
つまり、仕事を頼んだのはA担当者だから、Bさんがその仕事をやるようなそぶりをしたこと(=「後で見積り送りまーす」)が意思表示の合致した瞬間のように感じてしまうのですが、そこはまだ「意思表示を合致するための交渉」でしかない、ということになるのです。
意思表示の合致により契約が成立する…簡単に見えますが、実はとても難しいことなのです。ツカサとタミオの件にしても、ツカサの立場で考えると、タミオが値下げ交渉に応じた時、タミオが自分の申し込みに承諾した、と思っても違和感はないでしょう。A担当者とBさんにしても、仕事の受発注の関係で考えると、A担当者が「自分が申込者だ」と思っても違和感はないでしょう。でも、契約においては、A担当者はBさんの申し込みに承諾する立場なのです。
(つづく)