契約書
可哀想な契約書
「意思表示を合致するための交渉」、という言葉が前回のコラムで登場しましたが、この「交渉」…を省略し、「合意」…したかどうかは分からないけれども、…とりあえず契約書を作ってみた、そして締結してみた!という状況が、結局とても多いのではないかと思う時があります。
なぜ、せっかく時間をかけて契約書を作り、締結するというのに、結局こうなってしまうのでしょう…思うに、契約書の効果が全く信用されていないからではないでしょうか。
契約書を儀式として締結していませんか?
人間関係、会社関係、いろいろありますが、全く同等な関係というのは本当に少なく、状況によって上になったり下になったりしつつ、常に、関係には何かしらの上下が存在しています。はっきり見える上下、見えそうで見えない上下、完全に思い違いをしている上下…様々ありますが、この上下関係が、交渉を躊躇させる一因になっていることは否めません。「意見を言うなんて生意気と思われるかも」、「変に蒸し返すのも面倒だし」…届いた契約書を前にして、こんな風に諦めていませんか?
…とはいえ、上下関係に屈せず交渉せよ!と主張する気は全くありません。
その代わり、私はこう主張します。もっと契約書を信じてあげてください!
「言った」「言わない」で揉める、ということがよくあります。親子、兄弟、夫婦でこれが起こると、容赦ない大げんかになります。友達や恋人だとちょっと我慢したりしますが、度重なると縁が切れます。
さて、仕事の関係ではどうか。大げんかはできず、縁を切ることもできず、悶々としつつ関係が続くことが多いのではないでしょうか。
揉め事を回避するために…
上の方から「言ったじゃないか」と下に向かって言うこともあれば、下の方から「言ったじゃないですか」と上に向かって言うこともあり、その時はなんとなく関係が同等になるから不思議です。その同等になる感じがムカムカに拍車をかけそうですが、つまり!!何を「言って」何を「言わない」のか、初めから確認しておくことが「交渉」で、その結果が「合意」なのです。この程度のことで生意気だとか面倒くさいとか言ってくる相手は注意した方が良いレベルのダメなので、それが仕事前に分かるという点でも交渉は大事ですね。
何を「言って」何を「言わない」のか、契約書に書いておく…サインをしたり、ハンコを押したりしておく…そこまでしておけば、言わなかったことをいきなり言い出す、なんてことはそれほどないし、もしもそんな人がいたら、「どうだー!」とばかりに契約書を見せてあげてください。契約書は理不尽な人からあなたを守ってくれることでしょう。
そのためには、契約書を締結するにあたり、まず、自分は相手に何を言いたいのか、そして、相手は自分に何を言いたいのか、を考えることが重要になります。
(つづく)